誰もが楽しめる落語文化を
ユニバーサルデザイン(UD)落語絵本プロジェクトは、
新たな挑戦として、第2弾の制作に進みます。
聞こえなくても、聞こえにくくても。
見えなくても、見えにくくても。
誰もが一緒に笑える落語の体験を、
もう一歩、遠くまで。より多くの人に届けるために。
今回、題材に選んだのは
親子のやりとりと笑いが詰まった落語『初天神』。
子どもが初めて出会う落語として、
最も“体験の入口”になる噺です。
第1弾『まんじゅうこわい』─確かな手応えと、その先
UD落語絵本の第1弾『まんじゅうこわい』は、
クラウドファンディングにより制作されました。
多くの方のご支援によりプロジェクトは成功し、
完成した絵本は全国の点字図書館と盲学校
(計150カ所)への寄付という形でも社会に届けることができました。
触図・点字・3D造形を取り入れた絵本は、
密度の高い一冊になり、初版1,500部は完売となりました
同時に、次に進むための課題も見えてきました。
つくってみて、分かったこと
第1弾は、
“届いた人にとっては、とても深い体験”でした。
これを読んだ全盲の小学生の女の子がこう語ってくれました
「見えない人も見える人も公平に楽しめるから
みんなもっと仲がよくなると思う」
その言葉は、このプロジェクトが目指している場所そのものでした。
一方で、制作コストや流通の特性から、
届けられる人数には限界がある
という現実も残りました。
だから第2弾では、あらためて問い直すことにしました。
まず、多くの人に届くこと。
その上で、体験をどう深めていくかを考える。
それが、第二弾の出発点です。
この企画の原点
このプロジェクトの原点は、
今から20年以上前、代表理事・春風亭昇吉が大学生だった頃の体験にあります。
落語研究会の活動で、
ボランティアとして八王子盲学校を訪れた日のことでした。
事前に先生からは
「いろんな子どもたちがいるので、古典落語は難しいかもしれません」
と伝えられていました。
目の見えない子どもたちの前で落語をするのは初めて。
笑ってもらえるのか、そもそも伝わるのか。
舞台に上がるまで、不安でいっぱいでした。
ところが、思いきって落語を始めると、
会場は予想外の大きな笑いに包まれました。
落語では、顔を左右に向けて人物を演じ分けます。
盲学校の子どもたちは、その向きの違いを
音の反響の変化で感じ取っていたのです。
公演後、子どもたちからは
「おもしろかった」「声が聴きやすかった」
という感想が返ってきました。
最初に抱いていた不安が一気に消え、
涙が出るほど嬉しかった――
この体験が、昇吉にとって忘れられない原点となりました。
それ以来、
「落語を、目の見えない人にも届けたい」
という思いを持ち続けてきました。
2022年、その思いを
公益財団法人 共用品推進機構の星川さんに相談したことをきっかけに、
元盲学校教師で手と目でみる教材ライブラリーの大内先生など、多くの専門家と出会います。
そこで気づかされたのは、
落語をただ点字にするだけでは足りないということ。
登場人物や道具、長屋の空間を
触って感じられる形にすること。
落語の世界を「追体験」できること。
その積み重ねが、
目の見える・見えないに関わらず
誰もが楽しめる
ユニバーサルな落語のかたちにつながっていきました。
こうして生まれたのが、
“UD落語絵本プロジェクト”です。
第2弾で、なにが変わるのか
第2弾で見直したのは、「落語をどう届けるか」です。
どうすれば、もっと広く届くか。
どうすれば、特性の違う子どもたちが
同じ場面で、同じように笑えるか。
その問いから、
落語の体験そのものを組み替えました。
①絵が動いて、噺が進む
紙芝居のように楽しめる、落語の動画体験。
②聞いても、見ても、読んでも
声・絵・字幕、どこからでも物語が追える構成。
③特性に合わせて、笑いと共感が広がるように
テンポ、間、視線の流れを当事者目線で再設計。
※第2弾は、YouTubeでの無料公開を予定しています。
見えなくても。聞こえなくても。
誰が話しているか。どんな気持ちか。
情報を増やすのではなく、体験をそろえる。
それが、この落語のUD設計です。
描く人も、この作品の主役です
挿絵は、
障害のあるアーティストが所属する
「ありがとうファーム」と共につくっています。
表現すること、働くこと、
その両方が自然につながる制作現場です。
声もまた、アクセシビリティの一部です
目指しているのは、
子どもが「聞きたい」と思う声。
まだ構想段階ですが、
声の表現の最前線で培われてきた技術と感性をもつ
プロフェッショナルとの協働を本気で目指しています。
テンポ、間、キャラクターの距離感。
落語の面白さや世界観を、声というかたちでも子どもたちに届けます。
途中にあることも、大切にしています
この企画には、
最初から決まった正解はありません。
だからこそ、
声・表現・技術・教育・出版など、
さまざまな視点で関わってくださる方と
一緒に育てていきたいと考えています。
誰もがともに笑いあえる
その当たり前を、
一緒につくっていただけたら嬉しいです。